2021年05月

はね奴一代記 予告編(爆)

 このブログを再開したとき、いくつかの企画(案)があった。

 とりあえずは「いま」思っていることを書いていこうと思ったが、それと同時に、70年の自分の人生を振り返ってみるのも面白いかな、と、考えていた。物心ついて以降の私の人生は、常に、社会的問題との深い関係の中にあったからである。

 人生最初の記憶。私の場合、それは3歳のときだ。1954年、昭和29年である。
 父の会社の社宅で、祖母、叔父3人、両親、そして、2歳年上の姉と私が暮らしていた。

 男性陣がみな仕事に出かけ、母親も夕餉の買い物に出かけていた午後のことだった。
 当時、病の床に伏していた祖母が、布団から起き出し、台所の方に歩き出した。玄関横にある社宅の台所は土間で、立派なかまどがしつらえてある。

 「ばあちゃん、なんばしよっとね」と、姉と私は尋ねた。
 祖母は「おしっこ」と答えた。台所で???!!!

 私たちは血相を変えて祖母に追いつき、「ばあちゃん、そこは台所よ! お便所はこっちよ!」と、2人がかりで祖母を抱え、縁側の端にある厠へ連れて行き、ことなきを得た。

 用を済ませた祖母をお布団に寝かせた後、動転していたであろう私たち姉妹は、たぶん玄関の外に出て、母の帰りを待った。母親は社宅のおばちゃんたちと一緒に買い物に行くのが常だったので、祖母の異変をしゃべりまくる幼い姉妹の話を、近所のおばちゃんたちも一緒に聞いていただろう。3歳のチビなので、おばちゃんたちの会話の内容は理解できていない。

 その夜、父と叔父が帰ってきた後にも、祖母の行動が話題になった。そこで何度も出てきたのが、「モルヒネ中毒(もるひねちゅうどく)」という言葉だった。午後のおばちゃんたちの会話にも出てきた言葉だった。

 当時の私にはもちろん理解の及ばない言葉だったが、語り口のマイナーな雰囲気から、何かしら「よくないこと」という印象を受けていた。

 その後の認識の変化はしっかりとは覚えていない。ただ、危ないクスリの「中毒」だと分かってからも、祖母はそういうものに耽溺する環境になかったはずなのに、と、長年疑問を抱いていたことを覚えている。

 最終的に疑問を解消できたのは、数十年後のことだった。

 当時、祖母は末期癌に侵されており、その痛みを緩和するためにモルヒネを投与されていたようだ。なにしろ66年余も前のことゆえ、投与量や副作用への認識も、現在ほど明確ではなかったと思われる。

 祖母の言行がモルヒネの副作用のせいなのか、それとは関係なく、本人の認知に問題が生じていたのか、今となっては分からない。ただ、3歳の私には、祖母の奇妙な行動が忘れようもない強烈な印象として残っている。その後まもなく訪れる、祖母が亡くなる直前の記憶も含めて。
 享年69歳or70歳。

 私の誕生日は5月24日。来週の月曜日に70歳になる。

グラフを見て考えること

 1週間前になるが、元官僚で現在は大学教授の「内閣参与」が、100万人あたりの新コロナ感染者数のグラフをツイッターで示し、「日本はこの程度の『さざ波』。この程度で五輪中止とかいうと笑笑」と書き込んで炎上した。

 書いた本人が「笑笑は世界に笑われるという意味」と弁解したり、「さざ波と言い出したのは私」と自己顕示する元厚生技官が出てきたり、複数のお笑い芸人が「教授は叩かれすぎ」と擁護したり、と、議論は不思議な拡がり方をしている。

 どうして、グラフそのものから見えることを考えないのだろうか。

 気になったので、グラフを調べた。
 ちょっと驚いた。下記のグラフは、私が選んだ国々の、感染者数の変遷を表示したもの。
 世界のどの国を表示するかは、自分で選べるのだ。
 coronavirus-data-explorer


 (このページをスクロールしていくと、上記のようなグラフが現れるが、そこには日本のデータが含まれていないので、自分で追加した)


 このグラフの右端が最新情報。これで見ると、イギリスと日本が、似たような数になっている。
 目立つのは、イギリスの変化。年末年始には世界で最も感染者数が多かったのに、現在は急速に減少しているのだ。
 ネット検索すると、その理由を解説した記事がいくつかある。
 参考に1つだけ紹介する。東洋経済オンラインの署名記事である。
 
 「感染者激減した『イギリス』から日本が学べる事  効率的とはいえない国でワクチン接種進んだ訳」小林恭子
 https://toyokeizai.net/articles/-/424062

 アメリカも、トランプからバイデンへと大統領が代わって以降、感染者数は急速に減っている。

 日本は島国だから相対的に感染者数が少なく、イギリスも島国なので(しかもEUから離脱したので)ロックダウンが効率的に実施できたのに対し、ヨーロッパ大陸の感染者数がけっこう高いままなのは、国境を越える人々の行き来を思うように制限できないからではないか。

 日本は国全体を見ると感染者数は少ないが、大阪、東京、福岡、札幌などの大都市とその周辺の感染者数は多いまま。緊急事態宣言の効果はほとんどなく、移動する人も多いため、収束の見通しはまったく立っていない。

 京都府に隣接する滋賀県は、他府県からの流入を防ぐために駐車場を閉鎖しているが、京都や大阪からの流入は止まっていないようだ。
https://www.kyoto-np.co.jp/articles/-/562293

 丁寧にグラフを見ていけば、考えられることはもっとあるだろう。

 諸外国の政治家やスポーツ(オリンピック)関係者は、「感染者数が少ないにもかかわらず感染拡大を繰り返している」日本政府の無能ぶりこそを、冷ややかな目で見ているだろう。
 笑われるというのなら、そういう意味しか考えられない。冷笑というやつである。

数字の裏側にあれこれ思いを馳せる

 京都市は緊急事態宣言の期間が5月末までに延期されたが、日常生活には何の支障もない。

 私はコロナ以前から、鶏、卵、豚、牛、魚介、野菜類は地元商店街の路面店で購入していたし、そこにないもの(豆腐店がないのは悲しい)は、ご近所スーパーとデパ地下で賄っていたからだ。

 最初に緊急事態宣言が発令されて以降の1年余、無為無策の大阪市まで仕事で往復していたが、自腹を切って密を避ける(在来線の新快速に乗らず、京都ー新大阪間は特急「はるか」に乗車し、新大阪発のメトロに乗って混雑を回避していた)など、感染予防の自衛策をとっていた。おかげで、今日までのところ、新コロナに感染せずに済んでいるようだ。

     *     *     *

 札幌医科大学が、新コロナ感染関係で興味深いデータを多数公表していることを今日知った。

 その1)人口100万人あたりの新コロナ感染死者数の世界比較


 南米のブラジルやチリがダントツに多い。日本は4、1%と、かなり低い。

 ところが、である。
 
 その2)大阪の死亡率はインドやロシアより高く、兵庫はアメリカの死亡率よりも高い
 


 インドは人口が多い分だけ死者総数のインパクトは強いが、人口100万人あたりの死者数でいえば、大阪はそれを上回っているし、兵庫もインドに近い。

 兵庫県(神戸市)に対する印象は、相対的に大阪よりいいとは思うが、実態は違う。
 私の詳しい「女性」関連の分野でいうと、兵庫県は「保守反動」の地域である。

 日本社会では明治以降、国の施策の一環として「婦人会」が組織された。
 第二次世界大戦中は「大日本婦人会」として、国威発揚や町内監視(隣組)体制維持に使われた。
 戦後は地域によって多様な変化を遂げる。
 私が実際を知っているのは京阪神3府県のみなので、そこに限って書く。

 大阪は、いかにも商売の町らしく婦人会の女性陣は逞しく、「1円募金」を募って、四天王寺夕陽丘に「婦人会館」を設立した。ここはその後、いわゆる男女共同参画施設となったが、新興のフェミ関連団体との関係でトラブった(正確には、フェミ団体が婦人会を排除しようとした)。
 私は、1円募金活動を行った中では最も若い世代の方々に直接話をうかがっており、素直に尊敬していたので、フェミ系の排除運動は支持しなかった。

 京都には「ドン」と呼ばれる婦人会会長がいて、彼女の名前を用いて、京都の女性行政は「つるの一声で変わる」と揶揄されていた。ただ、京都は共産党の強い地区であり、また、大学を中心とした女性解放運動もあったので、女性施策の偏りは相対的に少なかった。

 兵庫県の県庁所在地であり国際都市のイメージも強い神戸市では、反自民の女性議員が生まれなかった。知人の女性が何度も挑戦したが、当選はかなわなかった。
 関西圏では数年連続で「住みたい町」No.1に選ばれている西宮市にも「婦人会のドン」がいて、絶大な権力を誇っていた。行政関係の会議に出席するときなど、彼女はタクシーだか公用車で送り迎えされていた。さすがに今はもう亡くなっていると思うが(苦笑)。

     *     *     *

 硬直した地方自治行政が新コロナ感染対策でも成果を出していないと言えそうだ。
 プラス、大阪府に関しては、「新コロナ=風邪」論者に共通する、「どうせまもなく死ぬ高齢者はコロナでさっさと死んでもらい、医療費その他の自治体負担を軽減しよう」との考えが根底にあると、私は確信している。

 ばばぁのワタクシ、それには刃向かうからねー!

85年目のオリンピック

 意味不明の「聖火リレー」が続いている。『沖縄タイムス』の記事によれば、名護市でのリレーは灰色の幕の向こうで行われ、関係者(走者の家族他)以外の市民がランニングを見ることはなかったそうだ。
 https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/748326

 奈良市では、東京オリンピックの公式映画監督を勤める河瀬直美さん他が走った。
 https://www.tokyo-np.co.jp/article/97644(東京新聞)

 河瀬さんが公式記録映画監督に就任したと知ったとき、まず頭に浮かんだのが、レニ・リーフェンシュタールだった。ナチス・ドイツの政権下で開催されたベルリンオリンピックの記録映画『オリンピア』を制作した映画監督である。その前にも、ヒトラーの依頼で、ナチスドイツの宣伝映画を複数作っている。映画監督としての才能は確かなものだったようだ。

 河瀬さんも、カンヌ映画祭で何度も受賞するなど、映画監督としての評価は高い。
 私個人は、アマチュア時代の映画数本と『萌の朱雀』しか観ていないので、いいとも悪いとも言えない(観たいと思わなかったのは事実だけれど。苦笑)。なので、彼女の公式監督就任のニュースを目にしたときは、あぁ政権に利用されるんだな、それを了解したんだな、との感想を抱いただけだった。

     *     *     *

 国威発揚のためにオリンピックを成功させたかったヒトラーは、人種差別政策(ユダヤ人排撃や有色人種差別など)を一時凍結した。その結果、当初、オリンピックをボイコットするとみられていたイギリスやアメリカも、参加することになった。

 ただ、オリンピック終了後、ナチスドイツは戦争とホロコーストへの道を突き進んでいく。

 なお、オリンピックで初めてギリシャからの聖火リレーが行われたのも、このベルリン・オリンピックだったそうだ。

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 新コロナ感染抑止にずっと失敗し続けている日本の現状をみて、いずれオリンピック不参加を表明する国や選手も出てくるのではないかと思うのだが、さて、どうだろう。


 お昼のニュースが、今日の衆院憲法審査会で、国民投票法改正案が可決されたと伝えた。
 自民党政権が長年目指してきた「憲法を変える」ための助走の一歩というところだろうか。
 ヒトラーは戦争末期に追い詰められて自殺したが、現政権や前政権のソーリ大臣は、器がちっこいだけに、わざわざ襲われることもないだろう(奥崎謙三みたいな変人でも出てこない限り)。
 彼らは、老いた身の夢想として、「憲法を変えた政治家」として歴史に名を残したいのか???

 おっさん、並びに爺さんの考えることは、婆さんの私にはつかみどころがない。
プロフィール

はね奴

京都市在住。本・雑誌・DVDの企画・制作。エッセイ講座講師。20代から、労働運動と女性運動の重なる領域に生息。フェミとは毛色が異なる。

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